勉強もスポーツも、生きるために
僕にとって、お金というのは活動の制限を取り除いてくれる「自由への鍵」だと思っています。得たお金を、何にいくら使うか、といったことにはそれほど興味がなくて、お金という「鍵」によって、自分の時間や活動できる内容を自由に選択できるところに、最大の価値があると考えています。
芸能界でデビューしたのは39歳。活動歴は7年程度ですが、おかげさまでその鍵をある程度は手に入れることができた、という実感があります。もし、子どもの頃の僕が今の僕を見たら、きっと「楽しそうでいいなあ」「すてきな人生を送ってるなあ」と思うでしょうね。
「お金は大切なものだ」とはっきり自覚したのは、小学校の時です。両親が離婚して父子家庭になりましたが、父親とは別に暮らしていたので、実際は2歳上の兄との2人暮らし。住む場所はありましたが、生活費は自分で稼がなくてはいけませんでした。
近所の大きな家に住んでいる方が、僕の境遇を知って、「うちのゴミ出しを手伝ってくれたら、毎月500円あげる。ほかの家の分もやれるなら、私がみんなからお金を集めてあげる」と言ってくれました。そこで早起きして、家の前に出されたゴミを集積所まで持っていくように。最初は30軒程度でしたが、徐々に増え、多い時には150軒にまでなりました。
今思うと、たぶんそのおばさんはご近所から徴収などせず、ご自分で負担してくださっていたんだと思います。子どもだから何も考えずに頑張って軒数を増やしてしまったけど、150軒だと月に7万5000円ですからね……。
でも、そのあたたかい援助のおかげで、一定の期間、生活は楽になりましたし、「お金」というものに向き合うきっかけにもなった。人が嫌がることを引き受ければ、そこにお金を支払う人もいるのだということも学べて、いい経験ができたと思います。
中高生の頃は生活のためにアルバイトもしましたが、知識も経験も浅いので、稼げる収入などわずかですよね。月末には、ガスや電気が止められてしまうようなこともよくありました。先生方は僕の境遇を知っていたので、「勉強においで」と家に誘って、ごはんを食べさせてくれました。
僕はスポーツ一本できたように見えると思うのですが、中高6年間は勉強浸けでした。大学まで進学したいと思っていたので、成績がいいと学費が免除される中高一貫校を選び、6年間の学費をすべて免除してもらい、奨学金を生活費の足しにして卒業。大学進学も決めることができました。