あの時代の空気が、私の美意識を育んだ

私は1935年に生まれ、家は国際色豊かな長崎でカフェーを経営していたので、まさに昭和モダンの申し子。店で流れているタンゴなどを聴きながら、絵を描いたりしていました。ロマンあふれるあの時代の空気が、私の美意識を育んだのです。

ところが日本は徐々に、軍国主義の時代に向かいます。太平洋戦争が始まると、「敵性文化を商売にするのは時局にそぐわない」と言われ、わが家はカフェーを廃業させられました。中原淳一さんも、目が大きくて西洋風の少女の絵が軍部から睨まれ、仕事の場を失ったそうです。昭和モダンは今見てもおしゃれなので、みなさんも見直してはいかがでしょう。同時に、あの素敵な文化が軍国主義によって奪われてしまったという事実も、頭の片隅に置いておいていただきたいと思います。

 

●今月の書「昭和モダン」

「昭和モダン」(書:美輪明宏)
(書:美輪明宏)