(以下写真◎本社 奥西義和)
お笑いコンビ「ロッチ」のツッコミ担当、コカドケンタロウさん。そのコカドさんを一人で育ててくれた母親は、小さな頃からとことん甘やかしてくれたそう。「母の育て方のおかげか、幸せのハードルがめいっぱいに低くなった」と語るコカドさんが、この度、趣味のミシンの本『コカドとミシン』を出版することに。生涯の趣味に巡り合い、友人に恵まれ、芸人として独自のポジションを築いてきたコカドさんが語る、豊かな人生の探し方とは?(構成◎岡宗真由子 撮影◎本社 奥西義和)

母と姉から甘やかされて

今回縁があって『コカドとミシン』を出版させていただくことになりましたが、ミシンが子供の頃から身近にあったか、というと、そうでもありません。

『コカドとミシン』(著:コカドケンタロウ<ロッチ>/ワニブックス)

母は学校指定の用品を作ってくれましたが、「何でも手作り」みたいな人ではありませんでした。

父は……。僕が8歳の時に「銭湯へ行く」と言って家を出たまま、まだ帰ってきていません。

僕には姉がいるのですが、母と姉は父のことを「なんでもないこと」という雰囲気を醸して、僕をめちゃくちゃ甘やかして育ててくれました。

何か流行っているものが欲しいと言えば買ってくれましたし、食べたいと言えば食べさせてくれました。姉はたくさんのアルバイトを掛け持ちして、僕にゲーム機を買ってくれたり、18歳になった時には、運転免許の費用も出してくれました。

僕もなんとなく事情は察していたので無茶苦茶なわがままは言いませんでした。反抗期もなかったように思います。そもそも何一つ反対されないので反抗のしようがなかった。

母は僕に「人様に迷惑かけんのやったら、ホームレスになったっていい」と言っていたくらいです。「お父さんも今頃ホームレスかもしれんしな」と、母はあっけらかんと言っていました。

僕は何かに抜きん出たところもなかったのですが、母も姉もいつもたくさん褒めてくれて、ああしろこうしろとも言わなかった。叱られた記憶もほとんどありません。