とても愛される役はずっと不安だった

一条天皇役の塩野瑛久さんとは、再共演になります。塩野さんもウイカさんのように「すごく定子さんが好きです」と持ち上げてくださって、言葉で表現してくださる方だったので、それに対してもすごく救われた感覚は強いですね。とても愛される役は、「自分で大丈夫なのかな?」と、どこかずっと不安だから。このおふたりは、セリフの上だけではなく、気持ちもケアしてくれたと思っています。

『光る君へ』場面写真
御簾の中で、いつも愛が溢れる一条天皇と定子のシーン

一条天皇と定子のシーンは多いですが、総じてすごく複雑だなと。最初は可愛い弟分で、そこから男性として見るようになって、そして愛し合うようになって。その後はただ好きなだけではなく、この人に見放されたら自分と子どもの行く場所がなくなる、終わってしまう、という保身的な意味も加わってきます。一方で、一条天皇は愛一本勝負で来てくれるキャラクター。その温度差みたいなものは、ものすごく男性と女性の考え方の違いとしても見えていました。

愛情をもらうのも嬉しいし、全力で応えたいけれど、それだけじゃないことも考えなくてはいけないというもどかしさ。とくに後半は、混沌とした感情が定子の中にあって。さまざまな状況によって、どんどん真綿で首を絞められるような息苦しさが、後半はずっとありました。

でも、一貫して塩野さんが愛情を持ってお芝居してくださったので、不安な気持ちは少なかったです。塩野さんは、ものすごく平安の衣装が似合うんですよ。顔が彫刻のように奇麗だから、同じ画面に並びたくないな、と毎日思っていましたね。(笑)

最初に一条天皇とお会いしたシーンでは、柊木陽太くんが演じていたので20歳ぐらい下で、どう見ても同世代には見えないとわかっていたので、変に若作りするよりは、感情が複雑ではないようにしようと心がけていました。簡単に言うと、ピュアでいるということかもしれないですが、そこから嫌でも複雑になってしまう役柄なので、最初はまっさらな状態で入りました。変化を考えながら進んでいった感じです。

『光る君へ』場面写真
幼少期の一条天皇と定子の微笑ましいシーン。定子は心の拠り所となっていく