最後まで希望を持ち続けた父

でも今思い返すと、あの13日間の父はきっと、自分にも言い聞かせていたのではないでしょうか。「最後まで希望を持とう」と。半年も先の自分の誕生日の話をすることで、何とか母がその日まで生きてくれないかと、祈るような気持ちだったのだと思います。

いや、もしかしたら「おっ母はわしの100歳の誕生日を一緒に祝うてくれる」と、半ば本気で信じていたのかもしれません。

本当に、父は最後の最後まで、母の生命力を信じ、諦めていなかったのです。

 

※本稿は、『あの世でも仲良う暮らそうや 104歳になる父がくれた人生のヒント』(文藝春秋)の一部を再編集したものです。


あの世でも仲良う暮らそうや 104歳になる父がくれた人生のヒント』(信友直子/文藝春秋)

認知症の母をお世話した父は、愛に溢れた“ええ男”だった! 日本中に感動を巻き起こしたドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』の監督が紡ぐ、笑いと涙に満ちた家族の物語。同郷・広島の104歳、石井哲代さんとの同級生対談も収録!