生きるって楽しい
もともとお弁当作りは好きでした。というのも、蓋を開けるといろんな世界が詰まっていて、お弁当ってちっちゃな宇宙でしょ。しかも、その小宇宙の作り方は、演技に似ている。この台詞をどういう気持ちで、どういう味付けで表現しようか考えるのが芝居。
同じ厚焼き玉子でも、甘くすることもあれば、ちりめんじゃこを入れることもあるように、同じ『ハムレット』でも、俳優の味付け次第でいろいろな『ハムレット』ができあがります。一人の俳優の中でも、人生を積み重ねたことで、その味が変わったり。それが芝居の醍醐味だよね。
8月から上演が始まったミュージカル『モーツァルト!』では、まさしくその変化を感じています。モーツァルトの父レオポルトを僕が演じるのは、2002年の初演以来通算8度めですが、スタッフの皆から、「今回のお父さん、とてもいいです」と褒められるんです。
そりゃそうですよ。何しろ実生活で反抗期の息子に悩まされていますから、モーツァルトを諫める台詞も歌も、ただの演技ではない。
「遊んでばかりいないで早く楽譜を書け」という台詞を言う時、僕の頭の中には息子たちの姿が重なるんです。「スマホばっかり見てるんじゃない。宿題を半分でもいいからやれ」って(笑)。
僕が父親になる前とも、子どもが思春期を迎える前とも、明らかに演じ方が変わった。真に迫る心の声のおかげかな(笑)。だからこそ、まだまだ演じたい、舞台に立ちたいと思わずにいられないんです。
この連載ではこんなふうに、日々僕が感じていることや、歩んできた道のりを率直にお伝えできたらと思っています。僕の人生を通して「生きるって、だから楽しい!」と思っていただけたら幸いです。どうぞよろしく!