猫たちの食事場は、犬の届かない高いところにある。ごはんだよと言うと、大猫たちはそこに飛び乗る。エリックにはまだできないので、ソファやらピアノやら本棚やらをずっと伝って、大きく遠回りしてたどり着く。それが日に日に素早くなる。
椅子に飛び乗るのも、最初はできなくて、お尻を振りながら椅子の背に飛びついて落ち、また飛びつき、また落ち、でもまた飛びついて、右へ左へ体を動かして登り切っていたのだが、これも日に日にうまくなる。
ふと気がつくと、あたしの部屋にみんな集まっている。犬たちはベッドの上か、足元にいる。猫たちはコンピュータの前の椅子が好きで、入れ替わり立ち替わり、そこに来てそこで寝る。手前にあたしが座って仕事をする。今はエリックがいる。だからあたしのお尻がほかほかである。
すごいことに、エリックの来た日に死にかけていたニコがまだ死んでない。グルメ老犬食の効果もあるけど、何よりエリックの「生きる喜び」が家の中いちめんに鱗粉みたいにふりまかれていて、ニコがそれを吸い取っているからに違いない。
今の問題は、エリック、猫用トイレは見向きもせずに、うんちを、かならず大きい植木鉢(複数)の中にすること……。モンステラたちが迷惑がっている。
『対談集 ららら星のかなた』(著:谷川 俊太郎、 伊藤 比呂美)
「聞きたかったこと すべて聞いて
耳をすませ 目をみはりました」
ひとりで暮らす日々のなかで見つけた、食の楽しみやからだの大切さ。
家族や友人、親しかった人々について思うこと。
詩とことばと音楽の深いつながりとは。
歳をとることの一側面として、子どもに返ること。
ゆっくりと進化する“老い”と“死”についての思い。