5歳ながらに好物は「いもがら」
私の家では食べる物も他の家庭とは少し違っていた。
冷凍食品や惣菜などが食卓に並ぶことはなく、きんぴら、切り干し大根、煮物など、母が作る料理はどれも家庭的な手料理だった。
私が5歳くらいの頃、友だちの家で好きな食べ物を聞かれ「いもがら」と答えたことがある。芋のツルを甘く煮た渋い料理なので、友だちの親はそれを聞いて「5歳児から出る料理名じゃない」とびっくりしていたという。でも私にとってはそれくらい、日常的な料理だった。
さらに、毎日食べるお米は、基本は玄米を5割だけ精米した5分つき米、7割だけ精米した7分つき米が基本だった。白米は誕生日に手巻き寿司をする時にだけ出てくる特別なもの。外食もほとんどしなかった井上家で育った私にとって、給食でツヤツヤの白米が出てくるのがうれしくて仕方がなかった。