毎日学校に行けている状態が恥ずかしいと感じ始めた

現実は甘くなかった。

仕事がないわけじゃないけど、想像していた忙しさでは全然ない。東京へ行くのは週に1回くらいで、学校にも普通に通えるペース。その間も上級生からのいびりは続き、私は勝手に「仕事がないから学校に来ているんだと思われている……」と思い込み、毎日学校に行けている状態が恥ずかしいと感じ始めていた。

『じんせい手帖』(著:井上咲楽/徳間書店)

今振り返ると、思春期だったのもあったからか、明らかにメンタルのバランスがおかしなことになっていたと思う。

気まぐれで、超意地っ張りで、へそ曲がりになっていた。

例えば、朝起きる時間が10分遅れただけで、「もう自分はダメ人間。だから今日は学校に行けません」となる。親友のいつきがわざわざ山の中の家に迎えに来てくれて、「行こうよ」「ちょっとくらい遅刻しても大丈夫だよ」と言ってくれても、ダメなのだ。やさしくされればされるほど、意固地になっていく。

1回決めたことを変えられない。気持ち的には落ち着いてきているのに、「今日は行かない」と言った手前、覆すのはかっこ悪い。いつきが何を言っても「いい」「やだ」「変えない」ばかり。

ずっとそんなことの繰り返しで、絶縁は時間の問題だった。