『新婚さんいらっしゃい!』のアシスタントMCを務めるなど、さまざまなテレビ番組で活躍するタレント・井上咲楽さん。「笑顔で明るくいつも元気」というイメージを持たれることもある井上さんですが、その半生は決して明るいだけではなかったそう。今回は、井上さんが抱えてきた不安や悩み、生きづらさなどについて赤裸々に綴った初のエッセイ『じんせい手帖』(徳間書店)から、一部を抜粋してお届けします。
高1の秋、学校に行けないくらい忙しくなるつもりでいた
高校1年生、16歳でホリプロスカウトキャラバンの特別賞をもらって、幼稚園の頃から出てみたいと憧れていたテレビに出ることができた。決選大会があったのはちょうど夏休みの最終週の週末。次の月曜日から学校というタイミングだった。
受賞の様子はニュースでも流れていたし、同じ学校に大手事務所のオーディションに受かった生徒がいるとなれば、気になるはず……。どんな反応があるのか、夏休み明けの私は期待半分、不安半分で登校した。
クラスの子たちは「すごいね」と褒めてくれたし、事前に校外活動として許可をもらっていたので先生たちも「やったね」と言ってくれて、概ね好反応。
でも、それだけじゃなかった。
上級生がわざわざクラスまで見に来て「あいつ?」「そうでもなくね」とヒソヒソ話していたり、運動部のヤンチャな人たちが教室の窓をドンドンドンと叩いて注意を引いてきたり。通学に使う電車の中で「結構調子に乗ってるんじゃないの?」「なんかちょっと気に入らない」みたいなやりとりが聞こえてきたりもした。
それでもしばらくは耐えられた。
「私はホリプロスカウトキャラバンに受かったんだから、絶対すごいスターになれる、テレビにたくさん出られる」という自信があったからだ。一部の人に陰口を叩かれていても、すぐに学校に行けないくらい忙しくなるつもりだったのだ。