マリさんの愛猫・ベレンが永眠しました。「テルマエ・ロマエ」が単行本として刊行されたタイミングでやってきたベレンは、多忙を極めるマリさんをいつも思慮深そうな瞳で見つめていたそうで――。(文・写真=ヤマザキマリ)

ベレンとの別れ

15年間、私の人生に連れ添ってくれた猫のベレンが永眠した。

8月半ばに体調を崩し、獣医のもとに担ぎ込んで以来数日おきの点滴を続けていたが、結局何が原因だったのかわからないまま、突然私の目の前で痙攣の発作を起こして死んでしまった。

もっと何か適切な処置があったのではないか、もっと長生きできたのではと後悔がつきまとうが、ベレンはもう戻ってこない。目いっぱい悲しみと寂しさと向き合い、感謝の気持ちで弔うことにした。

ベレンがやってきたのは、ポルトガルのリスボンに暮らしていた頃、マイナーな漫画誌で細々と不定期連載を続けてきた「テルマエ・ロマエ」がちょうど一冊の単行本として刊行されたタイミングだった。

こんなマニアックな作品は全国で500人も読者がついたら万々歳だと編集者に言われていたが、出版直後から重版が重なり、間もなくマンガ大賞と手塚治虫文化賞を受賞した。

同じ年には実写化が決まり、仕事の依頼もどっと増え、私の人生は一転した。ベレンはそんな私の激動の過渡期に最初から寄り添っていてくれたことになる。