(写真提供:Photo AC)
都市部や郊外で、タワーマンション建設や新規の住宅地開発が積極的に進められている昨今。しかし「不動産価格の高騰で、住宅の入手困難化が深刻」と指摘するのは、都市政策や住宅政策を専門とする、明治大学政治経済学部・野澤千絵教授です。そこで今回は、野澤教授の著書『2030―2040年 日本の土地と住宅』から一部引用、再編集してお届けします。

この10年で約6割の市街化区域で地価上昇

近年、毎年のように地価が上昇しているというニュースが聞かれるようになりました。

ただ、こうした地価の変動に関するニュースは、前年度からの増減で語られることが多く、結局のところ、昔に比べてどの程度、どのエリアの地価が上昇しているのかがイメージしにくいと思っていました。

そこで、公示地価よりも調査地点が多い都道府県地価調査(以下、地価と称す)を元に、10年前(2013年)の地価との比較をしてみることにしました。ちなみに、2013年と言えば、ちょうどアベノミクスがスタートし、東京オリンピック2020の開催が決定した年です。

まず全国的に見ると、10年前の2013年に比べて、2023年の地価は全調査地点の35%(18168地点のうち6447地点)で地価が上昇しました。すでに市街地となっている区域(市街化区域)だけで見てみると、10年前から上昇した地点は調査地点の約6割(9667地点中5891地点)にのぼっていました。

つまり、この10年で総人口の71%が住んでいる市街化区域の多くで地価が上昇したことがわかります。