地方都市の地価上昇
また、地方都市では、産業誘致が進む北海道千歳市や熊本県菊陽町、観光開発が旺盛に行われている北海道倶知安(くっちゃん)町、沖縄県なども地価が上昇していました。
ちなみに、北海道のニセコエリアにある倶知安町は、上質なパウダースノーがあるスキー場としてオーストラリア人が見いだして以降、海外の人に人気のスキーリゾート地となりました。ここにはこの10年間で地価がなんと18倍となった全国で最も上昇率の高い地点があります。
それでも、外資によるホテルやコンドミニアムの開発計画中の案件がまだまだ多数、控えています。ただ、ここまで高騰すると、もう地元の人には手が出ない状況を引き起こしています。
以上のように、旺盛に新規の開発があったところで不動産取引が活発化、顕在化したことによって地価が上昇し、それが周辺の地価にも波及していったと考えられます。
確かに、地価が上昇すると、国や自治体は固定資産税などの増収につながるというメリットがあります。その一方、そのエリアに土地を持っている人にとっては、資産価値は上がるものの、土地にかかる固定資産税・都市計画税・相続税の負担が増えるというデメリットがあります。
賃貸住宅も大家の税負担が増すことで家賃が値上げする可能性があります。また、開発事業者にとっては、住宅の新規開発のための土地取得費が上昇します。
このように、地価の上昇は、様々な面で住宅の高コスト化につながっているのです。
●注
(1) 東京都都市整備局ウェブサイト「都市施設整備再開発事業」https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/sai-kai_02-2.htm、及び東急不動産ウェブサイト「東京都市計画事業泉岳寺駅地区第二種市街地再開発事業 特定建築者の業務に関する基本協定書を締結」https://www.tokyu-land.co.jp/news/2021/000630.html などによる。
※本稿は、『2030―2040年 日本の土地と住宅』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『2030―2040年 日本の土地と住宅』(著:野澤千絵/中央公論新社)
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