「つらい関係から逃れるためにも、自分らしさの確立と成長のためにも、自我をアピールする方法を身につけていくといいですね」(海原さん)

海原 感情を抑え込んで封をするのは良くない。隠していても、見抜く子どもは見抜きます。

伊藤 かといって冷静すぎるのも考えもの。アメリカで3人の娘を育てていたとき、2番目の夫は英国文化で育ったので、わりと理詰めで子どもを叱るんです。それも一つの方法ですが、それだけだと子どもに逃げ場がなくてかわいそうだった。

また相手を一人の人格として尊重するアメリカ流の子育ても素晴らしいと思いつつ、親子が完璧な姿しか見せないのも息苦しいと思った。適度に「ああ、母ちゃん怒ってるなー」と感じてくれる関係がいいんじゃないかと。

海原 YOUメッセージとIメッセージの違いですね。子どもという「あなた(YOU)」を主語にすると、命令的で責める口調になる。伊藤さんの場合は「私(I)は怒っている」と自分を主語にすることで、相手が納得しやすくなり自分も冷静になれる。

伊藤 まあ、私の再婚やアメリカ生活もあって、娘たちとは相当なことがありましたが、なんとか試行錯誤してきました(笑)。正解はわからないまま、彼女たちはアメリカでそれぞれ家庭を持ち、私は熊本で勝手にやっているし。

でもこないだ、私が野犬の子どもを保健所からもらってきたら、一番上の娘が「お母さんはやっと大学の仕事が終わって、自分たちに目が向くと思ったのに」と言ってきたの(笑)。40歳近い娘がですよ。

海原 「たまにはこっちも見てよ」というメッセージ?(笑)

伊藤 そのあとしばらく毎週定期的にその娘と電話で話すことにしました。この娘、ど真ん中に来るから、対処しやすい。