詩人の伊藤比呂美さん(左)と、心療内科医の海原純子さん(右)(撮影:村山玄子(伊藤比呂美さん)/大河内禎(海原純子さん))
母娘の日常を綴ったエッセイもある詩人の伊藤比呂美さんと、心療内科医として家族関係に悩む人にも向き合っている海原純子さんは、それぞれ幼少期から母との距離に違和感を抱えてきたという。母を看取った、今の年齢だからこそ言えることとは(構成=山田真理 撮影=村山玄子(伊藤比呂美さん)/大河内禎(海原純子さん))

前編よりつづく

子育てで気をつけたこと

海原 私は子どもがほしかったのですが、体質的に難しくて諦めました。伊藤さんは、娘さんがいらっしゃるのですよね。

伊藤 3人いまして、母娘のすったもんだを3回繰り返しています。でも、母のように厳しく娘たちをコントロールしようと思ったことはないし、できるとも考えていません。

もちろん、限度を超えたら「何やってんの!」と怒鳴るんだけど、そういう私を見て「家庭というところは、感情のリミッターを外して弱みを見せてもいい場所なんだ」と学んでくれたらいいな、くらいに考えていましたね。

海原 それはとてもいい感情の出し方だと思います。完全に抑えるのではなく、アサーティブ(相手を尊重しながら自分の意見や考えを適切に表現すること)な怒り方というか。

伊藤 海原さんが描いた二面ある顔の絵じゃないけど、仮面性は良くないと思ったんですよ。本当は自分がブチ切れているのに、「あなたたちのためを思って」と誤魔化すようなことはね。