「体が動かなくなり認知症が進んで、その苦しみがだんだん消えて穏やかになった。いい母親は寝たきりの母親だ、って思いましたね」(伊藤さん)

海原 それがねえ。父は、母が月々に使うお金をきっちり計算して、20年近く暮らせるように残してくれたはずなんです。それを10年も経たないうちに使い果たして。あるとき突然、「もうお金がないから、あとは払って」と。(笑)

伊藤 何に使っちゃったんでしょうね?

海原 まったく不明。そういえば母のダイヤの指輪を譲り受けたいと思っていたのに、「お金がないから売っちゃった」と、すごく安く売ってしまっていた。私に渡してもお金にならないと思ったから、と。これは結構ショックでしたね。

いろいろな仕打ちに慣れてはいたけど、そこまで嫌われているかと。本当に最後までわからない人でした。

伊藤 「毒母」という言葉があるけれど、どう思いますか?

海原 親というのはみんな、多かれ少なかれ《毒》を持っているものです。それが子どもの人生に影響するかどうかはお互いの性格にもよるし、環境や当事者の受け止め方などによります。

一方「毒母」の逆で、「慈母」――慈悲深い母も、子の成長を阻害している場合は問題です。

ある女性の場合、「母は本当に良いお母さんで仕事のサポートまで完璧。でも、私はすべて母が正しいと思って生きてきたから、何をするにも『母ならどうするか』が先に来て、自分では何も決められない」と悩んでいました。