アリスはよく、私の目をじーっと見るんですよ。もう、照れてしまうくらい(笑)。犬と見つめ合うことで、双方にオキシトシンというホルモンが分泌されることが、最近わかったそうですね。オキシトシンは「幸せホルモン」とか「愛情ホルモン」「思いやりホルモン」とも呼ばれており、母親が赤ちゃんを抱っこしたり、子どもの目を見つめて会話したりすると分泌されます。
オキシトシンが出ると、さらに愛情が深まり、信頼関係が生まれる。人間どうし以外でオキシトシンの分泌が証明された動物は、犬が初めてだそうです。私とアリスの間も信頼関係がどんどん深まり、いまや人生のパートナー。生涯の友、といった感じです。
自分自身におきかえたら、できないはずなのに……
私がアニマル・ウェルフェア(動物福祉)に則った犬猫の殺処分ゼロを目指す活動などを始めたのは、10年前、新聞で年間約30万匹の犬や猫が殺処分されていると知ったのがきっかけです。当時テレビのニュースにかかわっていましたが、そういった事実が取り上げられることはまずありませんでした。私自身、殺処分やペットショップの裏側から目をそむけていたと思います。
でも、現実を知らなくてはいけないと思って蓋をあけたら、いろいろなことが見えてきました。そこから自分で取材するようになり、もっと多くの人に知ってもらいたいと思うようになったのです。4年前には財団も作りました。
殺処分のために私たちの税金が使われるより、動物たちを生かすために使うことができないか。そう考える人が徐々に増え、意識も変わりつつあると思います。一方で、のら猫に不妊去勢手術をしてえさ場をきちんと管理する地域猫活動などに対しても、不寛容な人が増えている。分かち合う気持ちがなくなり、地域は人間だけのものだと思うような考え方は、ちょっと怖いなと感じます。