もうひとつの業務

重三郎は本をつくって出版するという業務のほかに、すでにできあがっている本を貸すという仕事、貸本業もやることにしました。

江戸時代、情報の主軸だった本は、非常に高価なものでした。普通の人たちは、なかなか手に入れることができません。貸本屋から本を借りて読む。読んだら返す。そのスタイルが一般的でした。

(写真提供:Photo AC)

レンタル料は新刊が24文。旧刊が6文くらい。新しい本を購入するとなると、24文の数十倍のお金を払わなくてはなりません。この頃の物価としては、おそば一杯が16文です。本、ちょっと高過ぎますよね。普通の人たちにとっては、レンタルが妥当だったといえます。

情報誌だけではなく、読み物としての本も人気が出てきた時代です。読書を楽しみたいという人も、いまよりたくさんいました。重三郎は、そんな普通の人たちの需要に目をつけたというわけです。