優勝した2008年の準決勝が一番ウケなかった

NON STYLEは、もともとスタンダードな漫才をやっていたところから「イキリ漫才」を確立しました。そして2007年、忘れもしないM-1敗者復活戦で敗退してから、さらにイキリ漫才を脱して新しいスタイルを構築しました。

「一度ボケた後、太ももを叩いて戒める」スタイルですが、劇場での反応は「なんか変わったことやってんな」という感じでした。僕らにとっては、それは今までになかった前向きの反応でした。以前、僕らが感じていた手応えといえば「ウケること」だけでしたが、それ以外の手応えもあるねんなと、ポジティブに受け止めたんです。

そして臨んだ2008年のM-1準決勝。すべてが奏功して過去イチウケた、だから決勝に行けたんやと豪語したいところですが、そうではありませんでした。

むしろ今までの準決勝の中で、この年が一番ウケなかった。2007年のほうが断然ウケていたと思います。ただ、表面的に爪痕を残すのではなく、深いところまでえぐることができたという感触を得られたのは、やっぱり2008年でした。

※本稿は、『答え合わせ』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

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