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温かいお湯に浸かって心身を癒やす入浴。しかし、浴室での溺死は家庭内事故のトップであり、高齢者はとくに気をつけなければなりません。気温差が大きく、血圧が上下しがちな冬でも、安心して入浴するためのポイントを聞きました(構成=島田ゆかり イラスト=鈴木亮)

すべての動きをスローモーションで

私は多くの高齢者に入浴指導を行っていますが、日頃の入浴スタイルを聞くとヒヤリとするものばかり。熱めのお風呂が好きだったり、晩酌後の入浴、浴槽の中で新聞を読むという強者も。いずれも死に至るリスクを伴う行為です。

注意すべきポイントがいくつかありますので、入浴の流れに沿ってご紹介しましょう。

まず、入浴のタイミングですが、私が勧めるのは16時から18時。外気温がぐっと下がる18時以降に浴室での事故が急増するというデータがあるため、「夕食の前」を推奨しています。

食事前の入浴は、消化を邪魔しないという点でも重要です。食後は消化器に血液を集めて消化を行いますが、入浴をすると血液が全身をめぐるため、消化不良の原因に。

加えて晩酌後の入浴を避ける目的もあります。アルコールは血管を拡張させ、急激な血圧低下を引き起すからです。

入浴時には家族に「今からお風呂に入るよ」と声をかけましょう。浴室で何か起きても、発見が早ければ命が助かるケースは多々あります。家族の中で最後に入浴するのもやめましょう。入浴前にはコップ1杯の水を飲むこと。高齢者はのどの渇きを自覚しにくく、脱水症状を招きやすいのです。

脱衣所は安全のため火を使わないヒーターで温めておきます。大事なのは急激な血圧の上昇を防ぐこと。寒い脱衣所で服を脱ぐと体温を奪われて血管が収縮し、血圧が上がります。そのまま浴槽に浸かると血管に負担がかかり、切れることがあるのです。

浴室も入る前にシャワーなどで室温を上げておき、寒暖差がないよう準備を。脱衣所にはいすを用意し、転倒しないように座って着替えましょう。