海外の方々にも歌舞伎座へ足を運んでほしい

染五郎 わが家では、大晦日に浅草寺さんにご挨拶に行き、お正月の準備もかねて買い出しをするのが恒例行事ですね。

幸四郎 毎年、元日は朝から夕方くらいにかけてご贔屓筋への年始の挨拶回りをして、そのあと父の家に行く。2日からたいてい舞台が始まるので、忙しいというか、バタバタで。それがわが家のお正月だね。「寝正月」というわけにはいかないし、とにかくあわただしい。

染五郎 皆さんは年が明けたら初詣に行かれるのでしょうけど、うちは行かないですし。

幸四郎 今年も、あいかわらず忙しい1年になりそうだ。ひとつひとつの舞台に向かって、しっかりと臨んでいきたいね。1月は大阪松竹座で、8年前に新作として披露した『大當り伏見の富くじ』の再演が。4月は、襲名披露で父とこんぴら歌舞伎の舞台に立たせていただきます。6月には日本舞踊協会の踊りの会の演出をするので、その演出台本も完成させなくてはいけない。これからの日本舞踊の可能性を堂々とお見せできるような作品にしたいんだ。

染五郎 僕は年明け早々、『万葉集』を題材にしたミュージカルで和歌の歌詠みを志す青年を演じるという、自分にとって新しい挑戦からスタートしました。2020年は、できる限りいろいろなものに挑戦させていただければと思っています。

幸四郎 どうやって海外の方に歌舞伎を観ていただくかということは常々考えているけれど、オリンピックイヤーである今年はぜひ、日本にいらした際には歌舞伎座に来ていただきたいね。

染五郎 歌舞伎座に海外からのお客様がいらっしゃると、僕も嬉しい気持ちになります。たくさんの方に来ていただきたいです。

幸四郎 さらに言うならば、我々歌舞伎役者が海外公演に行くのもいいけれど、世界中の人たちに歌舞伎を演じてもらいたいとも思っている。歌舞伎の演出は、世界に通用するものだという自負があるから、世界中の演劇に取り入れてもらいたいんだ。歌舞伎的な演出が、世界の演劇界でのひとつの選択肢になるのが理想だね。

染五郎 お父さんがそうやっていつも歌舞伎の未来を考えているように、僕も何かを観て感動すると、まず歌舞伎に生かせないかな、と考えます。僕は未熟で自分自身が中心になって何かができる存在ではありませんが、本当に歌舞伎が好きです。

幸四郎 いまは勉強との両立も大変だろうけれど、歌舞伎が好きという気持ちをエネルギーにして、一緒に頑張っていこう。

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