『婦人公論』1月28日号の表紙に登場している松本幸四郎さんと市川染五郎さん(表紙撮影:篠山紀信)
令和2年の新年号(『婦人公論』1月28日号)の表紙を華やかに飾ったのは、十代目松本幸四郎さんと八代目市川染五郎さん。篠山紀信さんが表紙、グラビアともに撮り下ろした。歌舞伎舞踊の『連獅子』は、親獅子は仔獅子を千尋の谷へと蹴り落とし、自らの力で這い上がってきた仔獅子だけを育てるという「獅子の仔落とし伝説」に基づく演目で、白毛の親獅子と赤毛の仔獅子による豪快な「毛振り」が観客の目を奪う。厳しくも情愛深い父、けなげな子を演じる二人の心中は──(構成=篠藤ゆり)

仔獅子は大きく踊り、親獅子が受け止める

幸四郎 新年明けましておめでとうございます。

染五郎 明けましておめでとうございます。

幸四郎 今回、僕と染五郎の二人、『連獅子』の衣裳で表紙を飾らせていただきました。舞台では、長くて重さもかなりある獅子の毛を左右に振ったり回転させたり打ちつけたりと激しく動くので、絶対に落ちないようにぎゅうぎゅうに頭を締め上げているでしょう。舞台で舞うのは十数分くらいだと思うけど、たぶんそれが限界だね。それ以上続けると、酸欠で倒れると思う。

染五郎 毛振りは目が回らないかと聞かれることが多いですが、それはなくて、それよりも滑らないように踏ん張るのが大変ですね。僕が演じる仔獅子が毛振りをしながら花道から舞台に移動する場面では、かなり腰を落として、脚全体で体を支えています。

幸四郎 体幹がしっかりしていないと踊れないんだよね。僕が初めて父(二代目松本白鸚)と『連獅子』を勤めさせていただいたのは、12歳、小学校6年生の時。稽古中の毛の振り方が悪かったらしく、初日の2日前に、首を痛めてしまって──。

学校にいる時に首が動かなくなってしまい、歌舞伎座に行っても舞台稽古どころじゃない。スポーツマッサージを施してもらい、なんとか治して初日を迎えられたけど、そういう意味でもすごく大きな思い出になっている。いま考えると、『連獅子』前と『連獅子』後と、人生を分けてもいいくらい、大きな、大きな役だった。

染五郎 僕の初舞台は4歳の時、祖父と父と3人で演じた『門出祝寿連獅子』。親獅子、仔獅子に加え、僕が踊れる「孫獅子の精」というお役を新たに作っていただいて。小さかったので、その時の記憶はあまりないけれど、子どもの頃から勘三郎(十八代目)のおじさまの『連獅子』の映像を観ていたし、ずっと憧れていた演目でした。2018年11月、京都の南座の襲名披露で、染五郎として『連獅子』の仔獅子を勤めさせていただいた時は、すごく嬉しかったです。

幸四郎 それ以前、2016年に高知で1日だけ『連獅子』を演じたことがあったね。あの時は、毛が絡まってしまって。

染五郎 あとちょっとで終わるという時に絡まってしまった。1日公演だったので、リベンジできなかったことが悔しくて……。その思いを忘れずに、南座の舞台に立ちました。また、2019年11月に歌舞伎座で『連獅子』を演じた時は、南座でできなかったことをできるようにするのが目標に。舞台が南座よりずっと広いですし、一から考え直しながら勤めました。