約50年前と変わらない!? 地方暮らしを望む人の割合
過去の移住希望と仕事をめぐる状況を知るために、毎日新聞社の記事検索サービス「毎索(マイサク)」で、地方移住に関する過去の記事167本を調べてみました。その中でも特に古い時期の記事である1979年7月4日の東京版朝刊には、「東京圏住民、働き口あれば半数以上が地方OK-国土庁調査」という見出しが載っていました。
記事の内容を要約します。旧国土庁が1979年7月にまとめた大都市住民の地方定住意識調査によると、地方に住みたい人は東京圏出身者で12.5%、地方出身者で39.4%いることが明らかになりました。
さらに、「収入や働き口があれば」の条件付きで地方に移ってもよい人は、東京圏出身者で20.8%、地方出身者で23.3%となり、当時、4-5割の人が条件付きを含め地方に移住してもよいと考えていたことが明らかになりました。
実は「新型コロナの影響で地方移住への関心が高まった」と言われる昨今の調査でも、これらとさほど変わらない結果が出ています。新型コロナ禍の真っ只中に内閣官房が実施した調査(注3)によれば、東京圏在住者20-59歳の49.8%が「地方暮らし」に関心を持っており、地方圏出身者のほうが東京圏出身者よりも関心が高い結果となりました。
つまり、約50年前の日本でも、調査によっては、現在と同程度、大都市在住者が地方暮らしを望んでいたと言えるのです。この結果は、多くの人にとって意外に感じられるのではないでしょうか。
過去と相対化することで、「移住希望者が4割いるから、今こそ移住促進すべき」や「移住希望者が約5割になった、これは時代の転換点だ」という直線的な発想が必ずしも唯一の正解でないことがわかります。同時に、移住希望者を把握することの曖昧さや、移住希望者の多寡を判断することの難しさがわかります。
決して、今の移住希望者数が少ないと言いたいのではありません。現代を生きる私たちが「増えている」「減っている」と短期的な視点で捉えて一喜一憂するよりも、中長期的な視点で移住の成果や希望の推移をみていく必要があることをここでは伝えたいのです。
注3: 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局「移住等の増加に向けた広報戦略の立案・実施のための調査事業 報告書」2020、https://www.chisou.go.jp/sousei/pdf/ijuu_chousa_houkokusho_0515.pdf