「仕事があれば地方移住する」と答える人の割合も変化なし

移住を妨げる「仕事」についても過去と比較してみましょう。

2017年に、都市在住で企業に勤務する30代から50代の男女正社員を対象として、企業が地方移住の支援を行う場合の地方移住志向について、大正大学地域構想研究所が調査しました。

その結果によれば(注4)、企業の支援、つまり仕事の支援が得られるのであれば、「地方移住をしたい」あるいは「地方移住を検討したい」という都市勤務者が44%いることが明らかになっています。こうした層が、新型コロナ禍のテレワーク促進や一部企業の地方移住奨励によって移住したことがうかがえます。

過去の動向もみてみましょう。前述の1979年の国土庁の調査結果に戻ると、「収入や働き口があれば」の条件付きで地方に移ってもよいとする人は、東京圏出身者で20.8%、地方出身者で23.3%、計44.1%でした。

2つの調査結果の狭間にある時期については、日経産業消費研究所が1990年4月に同様の趣旨で実施した調査結果(注5)もみてみましょう。首都圏の2000人を対象に「仕事さえあれば、首都圏を離れて地方都市に住みたいか」と聞いたところ、男性は54%、女性は43%が肯定的に回答しました。

同所消費経済研究部は結果について、「男性は現役で働いている間は通勤ラッシュなどで苦労の多い首都圏からの脱出志向が強いが、社会から退く年齢になるにつれ“いまさら地方でもない”という気になるのだろう」「女性は年をとったらのんびりとした地方でという気持ちが出るようだ」と考察しています。

これら3つの調査結果は、設問や回答の選択肢に多少のずれはあるものの、全ての時期で、仕事さえあれば地方移住したい、あるいは地方移住を検討したいと考えている人が4-5割程度は常に存在していたことを示しています(図表2)。

<『数字とファクトから読み解く 地方移住プロモーション』より>

注4: 大正大学地域構想研究所「企業支援による地方移住に関する調査」2017、https://chikouken.org/wp-content/uploads/2017/12/shiryou20171208.compressed-1.pdf

注5: 日本経済新聞、1990年7月2日付