NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さん
(撮影:婦人公論.jp編集部)
NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さんによる『婦人公論』の新連載「老いの実況中継」。92歳、徒然なるままに「今」を綴ります。最終回は、【すべての世代に居場所と出番を】です。(構成=篠藤ゆり イラスト=マツモトヨーコ)

意気盛んだった80代、わが身の変化を感じつつ

先日出かける予定があり、助手に迎えに来てもらったのですが、ちょっと体調がすぐれず、直前にキャンセルすることになりました。そのとき、「出かけるのが億劫ですか?」と聞かれましたので、「いいえ、日々、息をするのも億劫」と答えた次第です。「老後はまさに今」ですから、調子のいいとき、悪いときの波を受け入れて、「今」を過ごすしかありません。

振り返ってみると、『老いの福袋』を出版したのは、88歳のときです。おかげさまで28万部を超えるベストセラーになっていますが、まさかそんなことが起こるとは想像もしていませんでした。出版社から依頼をいただいたのは2020年の暮れ。どのような内容の本にするのか、中央公論新社の編集者の方々と最初の打ち合わせをしたとき、私は「今日は大演説をします!」とぶち上げました。そして「おのおのがた、討ち入りでござる」とばかりに、「この本で、人生100年時代の問題と現実、そしてわれわれ高齢者世代はなにをなすべきか、総ざらいして世に問いましょう!」と気炎を吐いたのです。もしかしたらその場にいたみなさんは、私の勢いに気圧されたかもしれません。今思えば、あの頃の私はなんとエネルギッシュだったことか――。

それからわずか4年しかたっていないのに、今では比較的元気なときもあれば、食欲がなく弱ってしまうときもあり(食べるときは甘いものなどの糖分は気にせずいただきますよ)、体調のアップダウンに悩まされています。気力に関しても、「よし、もうひと仕事がんばろう!」とやる気がみなぎる日もあれば、なかなかやる気が起きず、ベッドでぐずぐずしながら本を読んで一日が終わってしまう日もあります。新聞を読む習慣も、目が疲れているときはお休み。外出も一人ではできなくなり、付き添いなしではどこにも行けません。なるほど、これが90代の現実なのかと、改めて感じる次第です。

今年発表された統計によると、現在80歳以上の人口は1290万人で、日本の総人口の10.4%、90歳以上の人口は282万人で、総人口の2.3%だそうです。私も282万人のうちの一人ですから、同じような思いをしているご同輩が全国に大勢いることになります。日本は世界で2番目に高齢者の割合が高い国ですが、人口の10人に1人が80歳以上という現実に改めて驚かされます。

わが人生92年を振り返ってみると、そのうち41年間、「高齢社会をよくする女性の会(Women’s Association for a Better Aging Society:略称WABAS)」の理事長を務めてきました。始めた頃は50そこそこ。それなりに人生経験も積み、しかも体力も気力も充実し、人生で一番元気のいいお年頃でした。