歌丸師匠の助言
K あとこないだ亡くなった六代目(三遊亭)圓楽さんも、「笑点」に入った頃、なかなかキャラがなかったんですよ。そこで生意気、腹黒っていうキャラを作ったのは歌丸さんなんです。ぼくの悪口を言いなさいって。「やるか、ジジイ」とかね。それで売り出したんだけど、あれは歌丸さんのアイデアなんです。
― お優しいんですね。
K そう。二代目の三平さんが入った時も、キャラが立ってないし、うろたえるんですよ。
― 大ベテランの中に入るわけですから余計に、緊張しますしね。
K するといつも歌丸さんが「焦らなくても、一生懸命にやっているうちに、自分の面白さが出てくるよ」って。三平さんはずいぶんその言葉に救われたって言ってましたね。
― 昔と違い、SNSやテレビの投票で、簡単につまらないって言われる時代になってしまいましたから。
K 芸人は蔑視されやすい職業だしね。笑いを作っているので、くだらないって言われると、どうしようもないですしね。例えばぼくも大喜利ではおバカキャラで売ってたけど、本心からバカをやっているわけじゃないんで。
※本稿は、『木久扇の昭和芸能史』(草思社)の一部を再編集したものです。
『木久扇の昭和芸能史』(著:林家木久扇、林家たけ平/草思社)
人気番組『笑点』勇退後、初めて語る秘話、エピソード満載の人物交遊録!
エノケン、彦六師匠、歌丸さん…。思い出の喜劇人、芸人、俳優たち。
昭和100年を目前に芸能史に詳しい林家たけ平がインタビュー。