帝国劇場2階ロビーにて記念撮影!

この『ミス・サイゴン』は、舞台で演じるうえでの大事なことを教えてくれた作品でした。幕が開いて2~3ヵ月くらい経った頃のこと。演出家からこう言われたんです。「ミスター・イチムラ、今のテンションを半分くらいにしてくれないか」と。

「初日の頃は君が周りを引っ張ってくれた。でも2ヵ月経ってカンパニー全体のテンションも上がっている。そこにミスター・イチムラのテンションが加わると……」「うるさいってことですか?」「うるさいわけじゃない。トゥーマッチなんだ」。つまりうるさいってことじゃないかと思ったけど(笑)、不安に思いながらも出力を半分に抑えてみたの。

するとどうなったか。それまではただ客席にいた1900人のお客さんが、前のめりになってグッとこちらに迫ってくる感じがあったんです。

そうか、お芝居はこちらがガンガン見せに行って、与えるものではない。半分の力でやると、お客さんのイマジネーションのほうが動くんだ。これは大きな発見でした。

それに半分の力で演じると、体も楽で(笑)。それ以来、無駄な力が抜けたんです。