「1年後に店を畳む」と覚悟を決めた

バイトで大きな声を出すことに最初は気おくれしていましたが、徐々に慣れて店頭でもよく声が通るように。お客さんとの会話も楽しかったし、何より社長が教えてくれる「八百屋のイロハ」が面白くて。コミュニケーションが上達していくのと並行して、野菜の並べ方や商品を売るコツなどを貪欲に身につけていきました。

意外にも僕はものを売る才能があったようで、1日で130箱の桃を売り、「天才桃売り少年」なんて呼ばれたことも(笑)。

お客さんが僕のすすめた品物を買って、「すごく美味しかった」と再び笑顔で来店してくれる。そのときの嬉しさと手ごたえが忘れられず、高校卒業後に就職した計測制御機器メーカーを1年ほどで退職。アルバイトをしていた八百屋さんに、今度は正社員として就職することになりました。

毎朝5時半に家を出て、青果市場で商品の仕入れ。先輩たちが買い付けた野菜や果物をトラックに積んだ後は、皆が朝食を食べに行っている間に一人で市場を見て回ります。売り子さんや仲卸業者から、野菜の目利き術を教えてもらうためです。将来自分の店を持つためにムダ遣いはせず、給料はすべて貯金に回していました。

八百屋さんでの修業を経て、21歳で結婚して家庭を持った頃、満を持してアキダイ創業の準備をスタート。資金はコツコツ貯めた500万円で、残りは青果信用組合から借りる算段でした。しかし社会的信用のない若造に融資は下りず……。車のローン400万円は組めても開業資金の200万円は借りられない、現実の厳しさを思い知らされたのです。