さらに揺れる<田沼施政>の評価

また<寛政の改革>の前に位置する田沼意次のインフレ政策は、評価がさらに変化している。

それこそぼくが習ったときには「田沼の政治はワイロ政治で幕政紊乱の基になったので宜しからず」といわれていたのが、徐々に「いや、経済を回して景気を活性化させようとする田沼施政はむしろ正しかったのではないか」との見方が優勢になりました。

ところが最近になると、「いやいや、田沼はインフレに誘導したというが、その根本は<質素倹約>で、吉宗や定信の幕政運営と同じなんだよ」との意見も出るように…。

ここまで読んで「え!? じゃあどの見方が正しいの?」と感じた読者もいらっしゃることでしょう。

要するに「江戸時代に行われた経済政策への評価はそもそも難しい」ということなんですね。

では、どうしてこんな事態が惹起されるのか? それは<歴史研究者の資質>のほうに問題があるからではないか、とぼくはにらんでいます。