(写真提供:Photo AC)
松坂桃李さんが主演を務める日曜劇場『御上先生』。「学校教育監修」としてクレジットされている横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一先生は、子どもたちが自由に生きていくための学校改革を積極的に行ってきました。これからの時代を生きていく子どもたちを、大人はどのように見守っていけば良いのでしょうか?今回は、工藤先生が子どもたちに向けて書いた著書『考える。動く。自由になる。-15歳からの人生戦略』から、工藤先生の“人生の授業”を一部お届けします。

「多数決はホントは民主主義じゃない」って知ってた?

これまでの日本の学校では、どちらかといえば「対立やジレンマを起こさない」コミュニケーション方法を教えてきました。

たとえば、クラスで話し合いをするとき、教員が「みんな、思いやりの心を持って話し合おう」などと言います。「感情的な対立は避けてほしい」と先にメッセージを出してしまうわけです。

生徒たちは空気を読んで、クラスの人間関係の中で折り合いをつけようとします。

口うるさく意見する生徒、やたら批判ばかりする生徒などを意識しながら、結局は権力の強い方や多数がいる方の勝ち、といった空気が生まれます。ほとんどの生徒はクラス内の力関係を察して自分の定位置を決め、対立を避けてしまうのです。

このようなことは、じつは日本の大人の世界でもよくあります。一般企業の会議でも、学校の職員会議でも、未熟な組織では「空気の読み合い」をするものです。

残念なことに、民主的な話し合いが求められる場面でさえこうした「空気の読み合い」がひんぱんに行われます。また、逆にこうした空気の読み合いを嫌ってなのか、対話を十分に重ねることなく、安易な多数決でものごとを決定してしまうことさえあります。

多数決を取ることは、乱暴に言えば「マイノリティ(少数派)を切り捨てる」ということです。「多数に従え」では、誰一人置き去りにしない社会なんてつくれるはずがありませんよね。