パレスチナ・ガザ地区ハンユニス。多くの建物が破壊された(2024年5月15日。写真提供:MSF)
〈発売中の『婦人公論』2月号から記事を先出し!〉
2023年10月7日、パレスチナの武装組織ハマスが、イスラエルに対し奇襲攻撃を仕掛けたことから始まった戦争。1年3ヵ月後の25年1月15日、6週間の停戦合意が成立した。この15ヵ月で、4万7000人のガザ市民が殺害されるなど、ガザは深刻な人道危機にある。一方、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区では、イスラエルによる入植が続いている。1月半ばまでガザで活動を続けていた看護師、そして24年夏にヨルダン川西岸地区を取材したジャーナリストが、現地の様子を語る(構成:古川美穂)

状況は本当に八方塞がり

私は2019年から「国境なき医師団(以下、MSF)」の活動に参加し、これまでに南スーダン、エチオピア、イエメンなどに派遣されました。

パレスチナ自治区のガザには24年7~8月と24年11月~25年1月の2回入っています。現地では看護マネジャーという立場で、看護師や清掃スタッフ、患者搬送スタッフなど約150人の責任者として、投薬や創傷ケア、感染予防など医療の質の管理に携わりました。

初めてガザに入った時に私がまず感じたのは、市民が置かれている状況が本当に「八方塞がり」だということでした。海側には戦艦が複数停泊し、陸側では攻め込まれてきた時に戦車を見たり、そこからの攻撃を経験したスタッフがいます。

物資も人間も、移動はすべて国境を管理するイスラエル軍によって厳しく統制され、1ヵ所からしか出入りできません。

朝も夜もなくドローン(無人機)が飛びかう音、ヘリからのダダダダという銃撃音、突然降ってくる爆弾の爆発音など、さまざまな音が重なりながら絶えず聞こえてきます。住民はテントや路上で避難生活を送りながら、どこからくるかわからない攻撃に常におびえている。最先端の武器が使用されていたのも印象的でした。