うつ病を疑うべき症状

うつ病が疑われる場合、我々精神科医が真っ先に確認することは、食欲と睡眠です。如実に食欲が落ちて、実際痩せてきた。眠れない。特に同じ不眠でも、朝早く目が覚める早朝覚醒や夜に何度も目が覚めて寝た気がしないという熟眠障害は注意が必要です。

他にも、いろいろなことが億劫になってくるというのもうつ病の特徴です。「全然掃除をしなくなって、部屋が荒れ放題になってしまう」「下着も含めて着替えもしないようになり、毎日同じ服を着ている」「風呂にも入らず、においがするのに気にしていない」こういった症状はしばしば認知症と間違われますが、うつ病でも充分あり得ることです。

『死ぬのはこわくない ―それまでひとりを楽しむ本』(著:和田秀樹/興陽館)

このような症状が急に出てきたときは、まずはうつ病を疑ってください。物忘れよりも「着替えや掃除をしなくなる」という症状が先に始まった場合は、余計にうつ病の疑いが濃いといえます。

うつ病はめずらしい病気ではありません。また、適切な薬物治療で改善することが多く、完治する人もいます。特に喪失体験が引き金で発症したうつ病は、うつ抜けするパターンがほとんどです。治療法があるのですから、おかしいと思ったら医師の元に早くきてほしいと思います。

何より大切なことは、ご自分の経過をよく知ることです。症状を知ることで、生活を変えたり、考えかたを変えたりすることができます。そうすることによって、うつ病になる前に対応ができ、ならなくて済むかもしれないのです。うつ病は、早期発見、早期治療が有効です。