(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
遺跡や遺構から歴史を研究する<考古学>。日々発掘調査に出かけていると思われがちな考古学者ですが、古代エジプトを専門とする駒澤大学文学部歴史学科の大城道則教授によると、ここ数年は10日連続で時間を取ることができないほど多忙を極めているそうで――。そこで今回は、考古学者の青山和夫さん、角道亮介さんとの共著『考古学者だけど、発掘が出来ません。 多忙すぎる日常』から、大城教授のリアルな日常を一部お届けします。

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「エジプトの発掘調査にはどうすれば連れて行ってもらえるのか」

若い頃の自分もそのような質問を持って先生の研究室にやって来る学生と同類だった。完全に気持ち先行型の学生で漠然と海外で発掘調査することを夢見ていた。実際は何もできないのに……。

しかし何もできないし実力もないのに根拠もなく、いつかチャンスが目の前に来ると信じていた。古代ローマの喜劇作家ティトゥス・マッキウス・プラウトゥスが言うように「大事なこととは、そのチャンスが来たときに眼を開けていること」だと信じて疑わなかったのだ。

だからチャンスが来たそのときには必ずこの手で確実につかみ取るために目を光らせていた。おそらくそれは同じ大学の先輩たちがペルーのクントゥル・ワシ遺跡やエジプトのアコリス遺跡で発掘調査に参加していることを私が知っていたからだ。たとえ低くとも可能性があることはわかっていたのだ。

幸運なことに私は自分の実力のなさ、勉強不足を自覚していた。ゆえに何が足りないのかを理解していたのである。何よりも大事なのは己を知るということだ。たとえ痛いほど力不足を自覚させられたとしてもである。