鎌田「僕が患者さんに教えるのは……」
大村 僕はこの年齢にしては、おしっこの悩みはあんまりないから、最近は同じような高齢の人には、「どうぞ、あそこ空いたよ」って譲ってあげるんです。
鎌田 優しいですね。腹圧性でも切迫性でも溢流性でも、尿失禁対策のために鍛えるのは骨盤底筋群なんですよ。だから男性はペニスを持ち上げるように、女性はクリトリスを持ち上げるようにすると、肛門がギュッと締まる。これを繰り返して骨盤底筋群を鍛えると、女性はちびりが少なくなるし、男性はおしっこの排出能力が強まる。
さらにこれは肛門括約(かつやく)筋の強化にもつながるので、硬い便を出し切る力にもなる。排便力も歳をとると低下するんですが、骨盤底筋群を鍛えることで、おしっこだけじゃなくて、うんこも排出する力がつくんです。
大村 僕も筋トレを始める前は、おしっこに行ったのに、帰り道にまたゆっくりトイレに引き返したことがありました。86歳からジムに通い始めて、若いトレーナーに、筋トレしながら「ここでお尻の穴を締めてください」とか言われて、最初は変なこと言うなあとか思いながらやっていましたけど、鎌田先生の話を聞いて、その効果がこういう形で出てきたわけだね。
鎌田 崑ちゃんはもうできているからいいんだけど、僕が患者さんなんかに教えるのは、息を吐きながら、肛門を意識して両手を握るんです。この動作で肛門を収縮させる。今度は吸いながら手を広げて、肛門を緩める。この繰り返しをすると骨盤底筋群が強化されます。
大村 これはわかりやすいですね。
鎌田 それから崑ちゃんの大好きな相撲でいうと、四股(しこ)も骨盤底筋群の強化にとてもいいんです。それだけでなく、四股を踏むと身体の上半身と下半身をつなぐ「腸腰(ちょうよう)筋」という筋肉が強化され、腸の動きも正常化されます。
※本稿は、『崑ちゃん・鎌田式 老化のスピードを緩める最強の習慣!』(潮出版社)の一部を再編集したものです。
『崑ちゃん・鎌田式 老化のスピードを緩める最強の習慣!』(著:大村崑、鎌田實/潮出版社)
60代でヨボヨボが始まってしまう人。80代でもピンピン元気な人。なにが違うのか――。
93歳の喜劇役者・大村崑と76歳の医師・鎌田實が90代の壁を悠々と超える健康法を披露!!