幸せへの旅立ち

「人生はプラスマイナスゼロ」と言う。人生の終結がプラスマイナスゼロならば、マイナスから踏み出してもいいのではないか。誰でも良い方法で最良の方向に出発したいけれど、プラスマイナスゼロ説が正しいのならばマイナスの出発も得策ではないか。

ただ、マイナスからの出発は大きな不条理に出合い、それを乗り越えた人が持ち得る理論だろう。

『いまを愛して生きてゆく ダウン症の書家、心を照らす魂の筆跡』(書:金澤翔子 文:金澤泰子/PHP研究所)

障害のある娘の誕生で私は地獄の淵から子育てが始まった。この不幸は夢だと思い、夢と現実の間で狂気になっていた。狂わなければ生きられないマイナスの極北から出発した私は今、比類ない幸せになっている。

マイナスからの出発は終盤にはプラスをもたらすものだ。計らずもマイナスから出発しなければならなくとも大丈夫。それは幸せへの旅立ちでしかないのですから。