「若いうちから先のことを考えて生きるなんて、つまらない人生です。だって考えたってしょうがないことでしょう?」(撮影:宮㟢貢司)
「人生100年時代」なんて言われるけれど、いったいいつまで生きればいいの?お金は、仕事は──。読者のみなさんが不安に思うことを、ご長寿のセンパイ佐藤愛子さん(96歳)にぶつけてみました。(構成=本誌編集部 撮影=宮㟢貢司)
Q. 2019年は「老後のためには年金以外に2000万円貯蓄が必要」というニュースが世間を賑わせました。そんな備えはない、と将来を案じる声が多くあがっています。

私は長い間、借金のせいで貯金通帳は残高ゼロっていうのが続いていましたからね、備えるなんて考えはないんです。いつの間にか借金を返し終えていくばくかの残高ができているのに気づいたときは、使い果たしてゼロにしたい気持ちになった。何かいつもと違う日常があらわれたようで、落ち着かないんですよ。ゼロが続いているのが「私の」通帳なんですから。

いまは少しは貯蓄があるんだろうけど、いくらだかわからない。長く生きていると何かの商品が満期になったりして、銀行から何やかやと書類が来るんですが、何十年も前にセールスに根負けして入ったものなんか、いまごろ書類が来たってワケがわからないんですよ。娘に「これ何だろう」って聞くと、「自分で勝手にやったことでしょ。私は知らない」と憤慨される。(笑)

『気がつけば、終着駅』佐藤愛子・著

こんな具合だから、「老後資金2000万円」ですか? 私がもっと若くても、そんなこと気にしてませんね。若いうちから先のことを考えて生きるなんて、つまらない人生です。「うまくいけば足りなくなるまでに死ねるだろう」って思っていたでしょうね。だって考えたってしょうがないことでしょう?

老後の生活が心配なら、いまから倹約すればいいじゃないですか。現代人は無駄なことにいっぱいお金を使っていますから、いくらでも倹約できますよ。スマホなんて、あってもなくてもいいようなもの。便利のための機械が多すぎるんじゃないですか。

新聞で振り込め詐欺の記事を読んでると、みなさん、お金を持ってますねえ。ほとんどの人が犯人の要求にすぐに応えているもの。