思慮深さを失わないために

「今の政治がオワコン」だと言うのは良い。では、どう変えていくのか。吉村洋文のように「若者」はいずれ年を重ねて実績を積んだベテランとなり、維新のように新風を吹き込むかのように見えた“新党”も歴史を重ねれば「既成政党」へと変化する。

一時的に既成政党への不満が高まっているように見えても、国政選挙で意思を問えば歴史のない政党が勝てるチャンスはかなり少ない。多数派を形成することこそが政治の要である以上、地道に実績を積み重ねることでしかチャンスはやってこないのだ。

したがって、内輪受けを重視する人々の訴える建前は、話半分で受け止めるくらいでちょうどいいというのが私の結論である。選挙は一時の祭りや「フェス」ではない。地味で、退屈な日頃の政治活動の延長に位置づくものだ。

『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』で取り上げた「嫌われ者」たち、そして彼らを生み出した構造はこの先も社会を騒がせる。さらに極端な言説を唱える人々、分断を煽る人々が新しく登場してはざわつかせるだろうが、極論に流されて、冷静さと思慮深さを失ってはいけない。

私が彼らを追いかけながら辿り着いた、たった一つの大切な教訓である。

 

※本稿は、『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮社)の一部を再編集したものです。

 

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「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(著:石戸諭/新潮社)

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玉川徹、西野亮廣、ガーシー、吉村洋文、山本太郎――
時に大衆を熱狂させ、時に炎上の的になるメディアの寵児たち。
毀誉褒貶付きまとう彼らは何者か。その存在はそのまま単純かつ幼稚な「正論」がもてはやされる日本社会の問題点、メディアの不健全さを映し出す。新聞、ネットメディアの記者を経て、ノンフィクションライターとなった著者が本人、周辺への取材を重ねて綴った、超ど真ん中、正統派人物ルポの誕生!