母の入院で見えた、家族の新しい面
カンナ 去年(2019年)の6月にお母さん、大腿骨を骨折して1ヵ月入院したでしょう。
メイコ あんな大ケガをしたのははじめてよ。「へぇ、私にもまだ経験してないことがあったんだ」「今なら、足が不自由な役がきても、うまくできるのに」と思っちゃった。
はづき そういうことも面白がるよね。「ピンチはチャンス」って。
カンナ お父さんは、お母さんが「来なくていい」と言うのに、連日、病院に通ってきたよね。自動車免許を返納しているから、電車を乗り継いで、お手製のお弁当を持って。
はづき 色の汚いお弁当ね。中身、ほとんど茶色なの。
カンナ たとえ得体の知れない料理でも(笑)、ずっとお母さんがごはんを作ってくれていたことに対して、お父さんなりの感謝の気持ちがあるんだろうなと思った。私も毎日、病院に手料理を持って行ったけど、お母さんが「今日は何が食べられるの
?」と聞いてくるのが新鮮だった。こんなセリフ聞いたことなかったな、と。
はづき たしかにないよね。
メイコ 素面だと言えるのよ。(笑)
カンナ 「今後、この老夫婦はどうするのだろう」という興味もあって、私は2人のことを観察してた。時々、「親がこの先、歳をとっていくとどうなるのかな」と考えると、夜、眠れなくなったり、悲しくなったりすることがある。一緒に住もうと思えばできるけど……。
メイコ イヤ~だよ。
カンナ (笑) お父さんと、今は蜜月だもんね。
メイコ 蜜月かどうかはともかく、お父さんが2つ上だから、私が見送るつもりでいるの。でもお父さんの望みは反対で、まず私を送ってから、ホッとして死にたいんだって。(笑)
はづき お母さんは、見送ってから3日間くらい大宴会したいんでしょ。
カンナ お父さんは涙に暮れたい。本当に真逆な夫婦だね。(笑)
はづき だからこそお互いに飽きないんじゃないかな。
カンナ 仕事ができているから、まだまだお母さんは大丈夫。私がプロデュースしている「耳で読む文学」という朗読の舞台にもはづきと揃って出演してもらってるし。そうそう、はづきは若い頃より今のほうがうまい。妻として母としてやってきたいろいろなことが蓄積されてきて……。
はづき なんたって、「家庭内女優」だからね。
カンナ 年月とともに溜まるのは皮下脂肪だけじゃない(笑)。読者の人たちも、蓄えて厚い層になっているものを、どう表に出すか、その方法を見つけられるといいよね。
はづき 私はまだ50代。先の人生は長いもの。子どもたちが巣立ったから、もう自分だけの人生よ。
カンナ お母さんの場合は、昔からずっと、やりたいようにやってきた自分の人生だったよね。
メイコ ありがたいことに。私はもう先が見えてるから、あなたたち、もうちょっとの辛抱よ!(笑)
カンナ うちは、なんだかんだでお母さんを中心に回ってるんだよなあ。