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栗田みどりさん(仮名・79歳)も川端さんと同様、顔に発疹や水疱が出た。24年6月のことである。しかし当初、違和感があったのは耳の中だったという。

「耳の穴のすぐ入り口が痛がゆかったんです。触ると、ぷつっとした発疹があって。そのうちどんどん痛くなったので、耳鼻科に行きました。50代で一度、帯状疱疹を経験していたこともあり、私から『帯状疱疹だと思うんですが』と伝えると、医師は『そうね』と言って薬を処方してくれました」

ちょうどそのころ、栗田さんは自宅リフォームのトラブルに見舞われていた。知人に勧められた業者に依頼したところ、思い入れのある家のあちこちを壊され、一軒建てられるほどの金額を請求されたという。老後のために残しておいた資金を思わぬかたちで失い、もう自宅は元には戻らない。ストレスで帯状疱疹を再発したのだと考えた。

2日ほど薬を飲んだが、痛みはひどくなる一方。栗田さんは「効かないのなら」と、その晩、薬を飲むのをやめてしまった。

すると翌日、耳だけでなく、顔の半分に激痛が走るようになった。慌てて大学病院に駆け込んだが、症状が出てすでに4日目。緊急入院となり、10日間、抗ウイルス薬の点滴による治療を受けた。

「『3日以内に来られたらよかったのだけど』と先生が言うように、入院中から、巨大な水疱が顔の右半分に広がっていきました。一番大きなもので3センチ大。水疱のあとのかさぶたは木の皮のようになり、食事を届けてくださる方やお掃除の方と顔を合わせると、皆見てはいけないものを見た、という表情をしていました。それはそれはひどいありさまでした」