とにかく彼を独占したい
盗み見ているから問いただすこともできない。心の中にモヤモヤを抱えたまま過ごしていると、なんだか他にも女性の影が見え隠れしているような気もした。
……まさか、マキ以外にもいる?
「生まれ変わっても一緒にいたい。ナミさえいれば他に何もいらない」
って言ってたくせに! ギリギリギリ……!
他の女性に取られるかもしれないと思うと、俄然、彼が魅力的に見えてきてすっかり夢中になってしまった。
嫉妬をするということは、彼をそれだけ好きだということなのか。それとも、他の女性も欲しがる男性だから魅力的に見えるのか。はたまた、自分のものを奪われたくないという執着心なのか。自分の気持ちなのに、どれだけ考えてもよくわからなかった。
とにかく彼を独占したいと感じた。私だけを見ていてほしい、裏切らないでほしい、他の女性と喋ってほしくない、通行人のかわいい子を目で追ってほしくない、頭の中で考えられるのも嫌、もうどこかに閉じ込めておきたい! グツグツグツ……!
常に彼のことで頭がいっぱいで、どこに誰といるのかいつも気になるようになり、ついに嫉妬心が爆発した。彼はちゃんと私だけを想ってくれているのかどうか、どうしても確かめたくなったのだ。
貧乳で、身長が高く、色黒で、友達が少なく、いつも家に居る私とは完全に正反対の「リョウコ」は、こうして生まれた。妻の不貞を妄想するあまり自分の弟に妻を誘惑させるという小説、夏目漱石の『行人』自作自演バージョンだ。