あなたは「タブレット純」を知っていますか?《ムード歌謡漫談》という新ジャンルを確立しリサイタルのチケットは秒殺。テレビ・ラジオ出演、新聞連載などレギュラー多数、浅草・東洋館や「笑点」にも出演する歌手であり歌謡漫談家、歌謡曲研究家でもあります。圧倒的な存在感で、いま最も気になる【タブレット純】さん初の自伝本『ムクの祈り タブレット純自伝』より一部を抜粋して紹介します。
バイト先の古本屋が潰れ
ほんの腰掛け、のつもりが、気がつくと首までどっぷりと浸かってしまっていた古本屋のバイト。
といって、クビになったわけではないけれど、どだいのっぺらぼうな、妖怪のような歳月、そして幕切れだった。
で、これから何をする?
ぼくはもう、26歳になっていた。もうすぐ27になる。27といえば、名うてのロックスター達が不慮の死を遂げ、「呪いの27」のようにロック史に刻まれた齢であったかと。
ぼくの場合のそれは「鈍(のろ)いの27」に違いない。ここまで、やるべきことを何もクリアせずに、ただのろのろと人里離れた畦道を徘徊し、切り株でふぅと休んでは、夕陽の漬け物になっただけ。
引き摺る影だけが重くなっていた。こんなことを若干意識していたのは、自分にも音楽への淡い夢があったから。しかしそれは遠い汽笛のように、儚く空に散るばかりだった。