歪んだ分岐点
介護の資格、といっても「ヘルパー2級」と呼ばれるそれは、通い切れば取得できる免状のようなものだった。
とはいえ、ぼくは束の間「学生」となって吊革に揺られることとなった。古本屋へは、南橋本という、やはりローカル駅沿いの家賃3万円のアパートから、おんぼろ自転車でキコキコ通っていたのだけど、学生街である町田への電車通学には、何となく遅れて味わう「若者気分」が幽かに立ち揺れた。
しかし、思い返せばぼくは1度、「学生」をやっている。
高校を卒業した年の冬に、製図の専門学校に通ったことがあった。これとて何かその方面へのビジョンに胸ふくらませて、のことではなかった。微塵もふくらまなかったかもしれない。
ではなぜ通うに至ったのか?いびつにふくらんでいたのは、「恋」だった。
高校の同級生で、現役で大学の夜間部に合格し通っていたその人と「同じ時間、同じ方向の電車に乗るため」だけで、その学校を選んだのだ。
そんな動機ゆえ、学校とは名ばかりの、雑居ビルにまばらに居を散らした、無認可のもぐりのような教室に過ぎず、授業料も通常の3分の1ほどだったか。
とはいえ、そんな資金は手元にないので、罪悪感を舌先にひりひり秘めつつ、親にすべてを賄ってもらった。
※本稿は『ムクの祈り タブレット純自伝』(リトル・モア)の一部を再編集したものです。
【インタビュー記事】
タブレット純「いじめや視線恐怖…普通に生きられない葛藤を、昭和歌謡が埋めてくれた。憧れのマヒナスターズに加入して」
『ムクの祈り タブレット純自伝』(著:タブレット純/リトル・モア)
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