「シネマ歌舞伎」の魅力
ーーシネマ歌舞伎は、松竹創業110年の2005年に始まった。全国の人に気軽に歌舞伎を楽しんでもらおうという試みだ。20年前の『野田版 鼠小僧』以降、50作近い作品が上映されてきた。3次元の舞台に対し、2次元の映画。その魅力は何だろう。
「シネマ歌舞伎」の良さは、客席からでは見えないところ、オペラグラスを使っても見えないところを、スクリーンで”発見”できることではないでしょうか。
だから、シネマ歌舞伎では「古典」をもっと上映してほしい。古典は、黒目の動かし方など細かいことが決まっています。例えば、世話物の『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)、通称・白浪五人男(しらなみごにんおとこ)』。店の番頭に「万引きをした」と弁天小僧がとがめられ、額を算盤で打たれ、頭をかしげる場面があります。弁天小僧がその傷を見せようとする時、顔ごとあげるのではなくまず目線だけあげることが口伝で決まっています。
劇場では分からないそのような細かいところが見つかるかもしれないのがシネマ歌舞伎ならではだと思います。