格差を拡大する慢性社会的敗北ストレス

ネズミで見いだされた結果について、人間にそれをそのまま当てはめるのはやや乱暴に感じられるかもしれない。

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とはいえ、ヒトとネズミの遺伝子にどれほどの差があるのかというと、2002年に6ヵ国からなる研究チームが、マウスゲノムをほぼ完全に解読したその成果報告によれば、遺伝子的にはマウスは驚くほどヒトに近く、全遺伝子のうちヒトにも対応する遺伝子が見つかったものは99%であったという。

一方で、種に固有の遺伝子は、全体の遺伝子の数約3万のうち、300個ほどにすぎなかった。

人間の男性においても慢性社会的敗北ストレスが遺伝子活性に変化を与えているのだとすれば、社会経済的地位と相関して子のストレス耐性に差が生じ、世代を超えてその影響が継承され続けていくということにもなる。格差は拡大し続けていく。もちろん幾分かの個体はこれを打開するための努力も工夫もするだろうが、全体的なトレンドに変化を与えるほどのムーヴメントになるだろうか? 楽観的な答えを出すには現実はあまりに残酷であるように見える。