穴の底に見えた骨

ガーゼを剝ぐと小さな穴が覗く。直径1センチ近くの丸い穴。そしてその穴の底に白いものが見えていた。

初めて見たとき、ぎょっとした。

どう見ても骨だった。

「痛くないや」と声かけしながら、滲み出している膿を拭きとり塗り薬のついた新しいガーゼを貼りつける。清潔なガーゼは朝になるとまた膿で汚れている。

生きていることは、こんなにもおぞましいことかと思う。

絆創膏を軽く押さえながら、「終わったよ」と言うと、樋口さんの小さな声が「はい」と答えた。普段は耐えたように黙っている人なので、そのか細い声を聞くことはあまりない。その樋口さんがカーテンの隙間から外を見ていたのか、「星がきれいですね」と言った。