余裕がない

その施設では、一日中、テーブルの所に座ったままなのだ。

起床し朝食のためにホールへ誘導されてから、夕食を済ませ口腔ケアをして居室のベッドに戻るまで、ほとんど体を動かすことがないのだ。

一日中テーブルの所で椅子に座ったままなのだ。

体を動かせるのはトイレとか入浴、風船蹴りなどゲームのときくらいだった。

人手が足りないのだ。

昼寝のために2階の居室に誘導したり、再びホールに誘導する時間がないのだ。もちろん外に散歩に連れ出す余裕などない。

昼間は大抵、施設長ともうひとりかふたりのスタッフの2、3人態勢である。ときどきケアマネジャーの田中真奈美さんか看護師の鈴木照美さんが来て4人態勢だったが、朝食から夕食までホールで過ごしてもらっていたのだ。

炊事、入浴介助、洗濯、掃除、食事介助、買い出し、レクリエーション、トイレ介助、病院の診察と9人を世話するには最低4人のスタッフが必要なのだが、それでも厳しいものがあった。