(イラスト:いだりえ)

小さな悟りを開いていこう

こうした練習を重ねても、すぐさま心おだやかな境地にたどりつけるわけではありません。お釈迦様は35歳でいっぺんに悟りを開きましたが、私たち凡人には土台無理な話。ですから、「これに関してはこだわりがなくなった」と思えることを、ひとつずつ増やしていければ十分です。

たとえば、「掃除をしなくては」「洗濯は朝のうちに」など「やるべき」にこだわると気が重くなりますが、「身の回りをきれいに保つには、掃除・洗濯はやって当たり前。苦にもならない」という境地に達すれば、悟りを開いた状態になります。

「これをやるべき」と思っている「有為」の状態から、「何のこだわりもなくできる」という「無為」になるのが、「解脱」。

大さじ何杯といちいち分量を量らなくても、鼻歌まじりに料理ができるようになれば、料理からの解脱。夫婦喧嘩を繰り返した末に、「もういい。自分の都合は引っ込めて相手を優先しよう」と思えれば、それは夫婦喧嘩からの解脱。このように物事を細分化して、小さな悟りを開くことを「別解脱」と言います。

こうして「無為」でできることを増やすと、心おだやかに暮らせる。とはいえ、年を重ねると、これまで「無為」でできたことが億劫になり、「有為」になることもあるでしょう。

そんな時は「私もまだまだだな」と笑い飛ばしてしまえばいいのです。続けていれば、また「無為」でできるようになるかもしれないのですから。