2009年に裁判員制度が始まり、以前よりは裁判が身近になったとはいえ「自分には関係ない」と思っている方も多いのではないでしょうか。そのようななか、令和6年に再審無罪が確定した袴田巌さんの事件を例にあげ、「日本国民であるあなたは、捜査官が捏造した証拠に基づき死刑を執行される危険性を日々抱えたまま生きている現実を知らなければなりません」と語るのは、元判事で弁護士の井上薫さん。そこで今回は井上さんの著書『裁判官の正体-最高裁の圧力、人事、報酬、言えない本音』から一部引用、再編集してお届けします。
判決を書きたくなくて、和解をすすめる裁判官もいる
民事の場合は和解で事件が終了することがあります。当事者双方がもちろん意見が合わないから訴訟を進めてきたものの、まあ証拠もだいたい出たし結論も想像つくからそれを前提に話し合いをしてそれで決めようという流れが和解を生みます。
当事者だけではなかなか話がまとまらないので、裁判所が仲介するということが多くあります。裁判官というのは、判決を書く人ですからその人にいわれると説得力があります。このままだと負けちゃうよといわれたら、普通の当事者はじゃあ和解をお願いしますとなりがちです。そういうわけで和解がかなり行われています。
和解すると判決を書かないで済む。朝から晩まで目を酷使し続けている裁判官にとっては、嬉しいことです。勤労者としての労力の使い方という点からしても和解の魅力は捨てがたい。
実際、民事事件の半分くらいは和解で終わります。