判決した方がよい事件

しかし、内心は和解にせず判決を出したほうが世の中のためにはよいと思うケースもあります。たとえば、医療訴訟などは、どこに責任の所在があったのかを明らかにするためにも、判決を出したほうがよいと思います。和解では原因や責任がすべて闇の中で終わってしまい、医療の前進が遅れてしまいます。

一方で、夫が浮気して離婚になった――などといった裁判は、和解でよろしいかと思います。

(写真提供:Photo AC)

ときには国家賠償を争う訴訟でも判決に至らない事案もあります。学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、改ざんを強いられ、自殺した近畿財務局職員の妻が、国に損害賠償を求めた訴訟は記憶に新しいことでしょう。

この裁判では、国側が遺族側の請求をすべて受け入れたこと(こういう手法を「認諾」という)により、判決を書かずに終結しました。本件については文書改ざんについて、しっかり事実認定をし、政府の法的責任を明確にするために判決が出たほうがよかったと思いました。