声を荒げる男
さて、携帯の話に戻ります。奥さんが、この男の時計の修理品を取りに来た際、店員が電話番号の確認をした。奥さんは男が修理依頼時に台帳に記載していた番号を知らず、2台目の携帯電話を持っていることが明らかになってしまったそうです。
この男、外に女がいるようで、問題の携帯はその連絡に使っていたようです。奥さんに迫られて認めたかどうかは知りませんが、ことによったら家を追い出されかねない事態だったのかもしれません。
谷口が応接室に入ってきました。
「お前がしゃべったんだろう」
と男は声を荒らげます。
「申しわけございません」
と言って谷口は頭を下げる。
男は今にも殴り掛かりそうな形相になっていますが、「まあまあ、この者も2台目の番号とは知らなかったようで、その件は家庭内で収めていただかないと。さらにことが大きくなるといけませんので、外野は引き下がります」と、私は言い切りました。
当然、相手は言葉がありません。
「申しわけございませんが、彼はもう帰しますがよろしいでしょうか」
と言うと、素直に頷きました。